こころの散歩
お礼の催促
お礼の催促
一休和尚がある時、寺の山門を建て替えるため、仏縁の人々から寄付を募ると、高利の金貸しをしている伝兵衛が寄付を持ってきた。
「ここに金子が百両あります。山門の建て替えの費用に充てて下さいまし」
特に「百両」に力を込めて言った。すると
「ふむ。承知した」
和尚はぶっきらぼうにそう言ってそっぽを向いてしまった。
伝兵衛は不平でならない。百両という大金を寄付しようとしているのに、今の挨拶は何事かと、再び和尚の顔を見ながら、
「百両でございますよ、はなはだ少のうはございますが…。」
と金包みを押しやった。
「百両…。そうか、承知した。」
和尚は相変わらずそっぽを向いている。
伝兵衛は腹が立った。大金をもらうのに「ああそうか」とは無礼千万。何とかお礼の言葉もありそうなものだと、
「和尚様、百両は少ないのかもしれませぬが、伝兵衛の身にとっては身分に過ぎた寄進と存じます。何とか、もうすこしご挨拶が…」
「…もっと礼を言えということか」
「いえいえ、そういうわけではありませぬが、手前の心をも察して…」
「バカな!お前が善根をするのに、なぜわしが礼を言わねばならぬのか!」
「現代一休とんち話」(東方出版)より