こころの散歩

かたつむり

かたつむり

 梅雨の晴れ間のある日、かたつむりが葉陰で昼寝をしていると、子供たちの話し声が聞こえてきました。
 「昨日、お母さんにしかられちゃった。帰りたくないな‥‥。」
 「じゃあ、ちょっと遊んでいこうよ。」
 「だめだよ、おそくなったら、またしかられる。」
 「何てしかられたの?」
 「宿題やってなくて、なまけ者のぐずだって。」
 「なんだあ、ぼくだって宿題たいへんだけど、できなかったらしょうがないよ。」
 その時、急に雨が降り出して、二人はかたつむりのいる木陰に雨宿りしました。
 「それで、結局できなかったのはどれ?」
 「国語の詩の宿題。」
 「雨、雨、降れ降れ、母さんが〜♪ じゃだめだしなあ‥‥。」
 かたつむりは雨に誘われて、葉陰から顔をのぞかせました。
 「あ、かたつむりだ。」
 「おい、かたつむり、宿題やってくれよ。」
 その時、かたつむりは、つのを2回曲げて、うなずきました。
 「えっ、まさか? かたつむりに言葉が通じるなんて、そんなばかな。」
 二人が驚いて、かたつむりの顔をのぞきこんでいると、やがてかたつむりは、何と雨音をBGMにこう歌い出したのです。

 ゆっくり生きよう スローライフ。
 地面の高さから 見えるものがある。
 だれだって
 大地から命をもらって 大地に帰っていく。
 自然は友だち。
 ゆっくりいっしょに過ごせば
 友だちの心がわかる。
 仲間がふえる。
 どこまでもつながっていく。
 大地から 空のかなたまで。

 「へぇー、びっくりだ!」
 二人は聞いた歌を、忘れないうちに急いでノートに書きました。
 次の日の帰り道、傘をさして木陰を歩く二人は、これまでよりも、もっと心を通わせて話し合える友だちになっていました。

  
  

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