こころの散歩

すべての鍵

すべての鍵

 昔、二人の僧が中国に仏法を学ぶために、旅に出ました。
 途中、野原の中の一軒のあばら家で旅の疲れを癒すことにしました。翌朝、快適な眠りから覚めたら、そこは風雨にさらされた人骨が散らばった墓のあとでした。次の夜は二人ともうなされて眠ることもできませんでした。
 一人の僧は、「人骨を見て悩まされるようでは、まだ自分は修行が足りない。中国へ行って徹底的に修行をしてくる」と言って、旅立っていきました。
 もう一人の僧は、散らばった人骨の中に立って、「何も知らないうちは、あんなにやすらかに眠れたものを、墓のあとだと知ったがために眠れない自分。すべての鍵は自分の中にある」と悟って、中国へは行かず、自分の心を見つめることこそ修行であると確信したのでした。

鈴木 秀子 著 「今日幸せになる171の言葉」(海竜社)より
画: 松村 美智子
  

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