こころの散歩

どうして人は怒鳴るか

どうして人は怒鳴るか

 ある日、バーバ先生はこんな質問をした。
 「どうして人は腹を立てると怒鳴ると思う?」
 みんなはしばらくの間、考えた。
 「冷静でいられなくなってるから。だから怒鳴ってしまう。」
と一人の生徒が答えた。
 「でも、どうしてそばにいる人に対して怒鳴る必要があると思う? 小さい声で話すことはできないかしら? あなたはどうして腹が立つと怒鳴るの?」
とバーバ先生は聞いた。
 数人が答えたが、どの答えにもバーバは納得しなかった。
 そこで、バーバ先生は話し出した。
 「二人の人間が怒っている時、お互いの心は離れています。だから、離れてしまった距離を補い、お互いの声を聞くために、人は怒鳴るのです。怒れば怒るほど、二人を隔てる長い距離を補うために、強く怒鳴らなければならないのです。」
 バーバ先生は続けて話した。
 「二人の人間が愛し合うとどうなりますか? 彼らは怒鳴るのではなく、話し方がやわらかくなります。話すのではなく、ささやくのです。なぜなら、彼らの心は近くにあるからです。さらに愛し合うと、ささやくのではなく、見つめ合うだけで全てが通じるようになります。愛し合えば、二人の心はこれだけ近づくことができるのです。」
 最後に、バーバ先生は言った。
 「話し合うときは、お互いの心が遠ざからないよう心がけなさい。心を遠ざけるような言葉を言わないように。なぜなら、戻る道がわからなくなるほど二人の心が離れてしまうかもしれないからです。」

(作者不詳)
画: 泉 類治
  

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