こころの散歩

なす

なす

 なす とは、色濃くつややかに、下へと実るもの。
 それがどうしたことか、横へと伸びた、なす1本。
 邪魔物にぶつかったわけでもなし、枝をよけたわけでもなし、
 はてさて、具合でも悪いのか。

 「おいおい、そこのなすさんよ、どうしなすった?」
 「いやあ、ちょっとした気まぐれでね。できるかなって、やってみただけさね。」

 なすは、いっぺんに人気者になったが、見てもらおうとして横に伸びたのではなかった。
 それ以来、畑のあちこちに、何であれ自分にできることを試してみようとする機運が広まった。
 そして、どの作物も順調に育ち、これまでになく豊作となった。

(実話脚色 作者不詳)
  

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