こころの散歩
ばあちゃん、口をつぐむ
ばあちゃん、口をつぐむ
じいちゃんとばあちゃんがある日、大げんかをしました。ばあちゃんはすっかり腹を立て、以後口をきかなくなりました。
一夜明けると、じいちゃんはけんかしたことなどケロッと忘れてしまいましたが、ばあちゃんの憤りは収まらず、依然として黙ったままでした。じいちゃんがなだめてもすかしても、不機嫌に黙りこくっているばあちゃんの口を開かせることはできませんでした。
するとじいちゃんは、食器棚、引き出しをひっくりかえして、ガタガタ捜し物を始めました。数分後、ばあちゃんは耐え切れず、怒りに震えて問いただしました。
「いったい何をお探しですか。」
「おお、見つけたぞ。」
腕白坊主の笑顔でじいちゃんが言いました。
「君の声だよ。」
画: 松村 美智子