こころの散歩
ほんとに愛しているのかな!
ほんとに愛しているのかな!
ぼくは、お隣のおねえちゃんの様子を見るのが好き。おねえちゃんは、彼氏が来る前には、キレイだって思って欲しいから、とてもおしゃれになる。そこへ、うわさの彼氏がやって来る。彼氏も自分をかっこよく見せようと必死。そんな彼氏を見て、おねえちゃんは、かっこいいわ、って思うらしい。おねえちゃんは時間をたっぷりかけて、クッキーを焼いたよ。彼氏に食べてもらいたいんだって。彼氏の方は、おねえちゃんが作るものなら何でもおいしい、と言って食べる。そして、二人が見つめ合っていろいろ話していると、時間があっという間にたっちゃうんだって。だから、おねえちゃんのお父さんが、しびれをきらして、部屋に行って、「もう帰る時間だよ」って言うまで気がつかないのさ。
ぼくの家だと、話は違う。だからお母さんには彼氏はいないのかな、と思って聞いてみたけど、お母さんは、自分の彼氏はお父さんだ、って言うんだ。ぼくは、それはうそだと思う。だって、お母さんは、お父さんからお花やチョコレートなんかもらったことないし、お父さんが、お母さんにプレゼント買ったことなんてない。クリスマスとお誕生日に、お金をあげるだけだよ、鍋でも買いなさい、って。お母さんは、お父さんが帰ってくるときはいつも不機嫌だしさ、笑顔なんか見せないよ。お父さんは、お母さんに「愛してる」って言う代わりに、「今日も仕事が大変だった」とか自分のことばかり言ってる。家に帰ったとたん、もうすごくだらしないかっこうになって、一杯やり始める。ごはんの時、お母さんは、お父さんが食べたいものを出すんじゃなくて、自分が楽に作れるものしか出さない。
お父さんは、お母さんに「きれいだね」とか言う代わりに、テレビのリモコンの場所がわからないと言ってごねる。お母さんは、お父さんに「あなたが大切なの」とか言ったことなんてない。いつも「お給料早く渡してちょうだい」って言うだけだよ。
お隣のおねえちゃんと彼氏は、じっと見つめ合ってる。くっついて離れない。だけど、うちのお父さんは、お母さんがそばにいても、テレビばっかり見てる。おねえちゃんと彼氏は、二人でずっと話していても飽きないみたいだ。でも、お父さんとお母さんは、もうお互いに興味がなくなっちゃったから、二人で会話なんかしないよ。
お隣のおねえちゃんと彼氏は愛し合ってるけど、お父さんとお母さんは、ただ結婚してるっていうだけだ。
(子どものつぶやき・作者不詳)