こころの散歩
アントニオスと猟師
アントニオスと猟師
砂漠で獣を狩っていた男が、兄弟たちとくつろいでいた師父アントニオスを見て、あきれてしまいました。
師父は、兄弟たちが時々息抜きをしなければならないことを、彼に納得させようと思って言いました。
「弓に矢をつがえてみよ。」
彼がそうすると師父は続けました。
「もっと弓を張れ。」
猟師は弓を張りました。師父はさらに
「弓を張れ。」
と言いました。猟師は
「そんなに張ると弓が折れてしまう。」
と答えました。
そこで、師父は語りました。
「神の業もこのとおりである。
兄弟たちを余り張りつめさせると、すぐ駄目になってしまう。
彼らも時々休まなければならない。」
この言葉を聞いて猟師は悔恨の情に打たれ、師父に大いに教えられて立ち去りました。
兄弟たちも強められて自分のところに戻って行きました。
古谷 功 訳 「ミニュ・ギリシア教父全集65巻」A章 より
画: 和田 耕一