こころの散歩
スイカ退治
スイカ退治
昔々、ある男が国を出て、あちこち放浪した末、阿呆の国というところに行き着いた。ほどなく、麦の刈り入れに出かけていた人々が、畑からほうほうの体で逃げ帰ってきたのに出くわした。
「畑に化け物がいる」と彼らは口々に言った。
行ってみると、なんとスイカのことだった。彼は「化け物」退治を買って出た。そして、スイカを茎から切り取ると、真っ二つにし、食べ始めた。ところが、人々はそれまでスイカを恐れていたのにも増して、彼を怖がりだした。
「追い払わないことには、次は私たちを殺すにきまってる」と彼らは言い合った。
そこで、手に手に棒やすきを振りかざして、彼を追い払った。
しばらくして、阿呆の国に別の男がやって来た。そして、前とまったく同じことが起こった。しかし、今度の男は、「化け物」退治を申し出るかわりに、化け物は危険だと皆と話し合い、慎重にその場所から退去することで、彼らの信頼を勝ち得た。男は何年も彼らと共に住み、徐々に肝心なことを納得させていった。そうして、スイカへの恐れを解消するばかりか、スイカの栽培にまで導いたのだ。