こころの散歩

マザー・テレサの口ぐせ

マザー・テレサの口ぐせ

 マザー・テレサは、共労者たちが元気をなくしているのを見ると、よく冗談を言って彼らを笑わせます。彼女はあるとき、次のようなおもしろい話をしました。

 ある旅人がいましたが、旅の途中、人里離れた荒れ野にさしかかったところで、車が故障して動かなくなってしまいました。近くに、かろうじて修道院がありましたが、修道士たちが持っている乗り物といえば1頭のろばだけでした。旅人がどうしても出発するというので、修道士たちはろばの扱い方を彼に教えました。止まりたいときは「アーメン、アーメン」、前に進みたいときは「神に感謝」と言わなければならない、ということでした。
 旅人とろばは順調に旅を続けていましたが、しばらくすると前方に断崖が現れました。緊張した旅人はやっとのことで言葉を思い出し、「アーメン、アーメン」と叫びました。ろばは、ようやく崖っぷちのところで止まりました。その人は安どの気持を抑えきれず、「ああ神に感謝」と口走りました。次の瞬間、彼は断崖からまっさかさまにころげ落ちていました。‥‥‥

 わたしたちは皆吹き出してしまいました。この笑い話は、マザー・テレサ自身をからかったものでもあったのです。彼女はいつ、どこでも、「神に感謝」というのが口ぐせでしたから。

アイリーン・イーガン、キャサリーン・イーガン 著 / 佐倉 泉 訳 「マザー・テレサの愛と祈り」(ドン・ボスコ社)より
写真: 片柳 弘史 「私はあなたを忘れない」 マザー・テレサのこころ、ドン・ボスコ
  

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