こころの散歩

メダルをもらって

メダルをもらって

 3年生の男の子がクラスで最優秀朗読賞のメダルをもらいました。少年は、家に帰ると得意満面でメイドに言いました。「ノラ、僕のように上手に朗読できるか、やってみてよ。」
 このやさしいおばさんは渡された本を手に取り、開いてじっと見つめていましたが、消え入りそうに小さくなって恥ずかしそうに言いました。「ビリー坊ちゃま、私は字が読めないんですよ。」
 孔雀が羽を広げたように得意になって少年は居間まで走って行って、お父さんに大声で教えました。「お父さん、ノラは字が読めないんだって。だけど、この僕は8歳なのに朗読のメダルをもらったんだよ。ノラは字が読めない本を見つめていた時、どんな気持ちだったのかなあ?」
 お父さんは何も言わず本棚から1冊の本を取って少年に渡しました。「ごらん、ノラはこんな気持ちだったんだよ。」
 その本はスペイン語でした。勿論ビリーは1行も読めません。その後、少年はこのことを忘れることはありませんでした。何か自慢げに話したくなると、彼は静かに自分にこう言うのでした。「思い出してごらん、僕はスペイン語が読めないんだ。」

“Tonne”より
  

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