こころの散歩

モミの木

モミの木

 エルサレム郊外のゴルゴタの丘でイエス・キリストを真ん中にして二人の強盗が十字架で処刑された。
 三人の遺体が引き下ろされ、十字架も引き抜かれ、丘の上には三つの穴が残った。
 次の年の春、三つの穴から芽が出てきた。右の穴からオリーブの芽が、左の穴からはヤシの、そして真ん中の穴からはモミの木の芽がそれぞれ生え出た。
 数年後、クリスマスが近づいた頃、ずいぶん成長した木が語り合った。「クリスマスのときイエスさまにプレゼントを贈ろうではないか」。一同の賛成するところとなった。
 まずヤシの木が「この大きな葉を使ってさわやかで涼しい風をイエスさまに吹きこもう」と言った。
 続いてオリーブが「ぼくは一番つややかで香り高いオリーブの実を差し上げよう」と得意気に語った。
 「ところでモミの木君はどうするの?」と聞かれたとき、彼は「ぼくには何もプレゼントするものがない。トガッたチクチクする葉しかないし」。この悲しい声を天使がキャッチした。そして空から舞い降りて言った。
 「モミの木よ、悲しむことはない。私がまず贈り物を与えよう」と言って夜空に輝く大きな星を取ってモミの木の先につけた。
 「この星は暗い世に光として輝く主イエスをあらわすものだ。クリスマスのたびごとに、世界中に主イエスの愛と平和を高々と告げ知らせ続けよ」、こう言って天使は去っていった。
 その日以来、クリスマスにはどこでもモミの木が真ん中に飾られ、そのてっぺんに大きな星をつけ、主イエスの誕生を祝し、暗い世に主の愛と平和の光を輝かせることとなっている。

(ドイツのクリスマス民話)
  
写真: 馬 裕国
  

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