こころの散歩

三つの願いごと

三つの願いごと

 ヴィシュヌ神は、信者のしつこい頼みにうんざりして、言われました。「どんなことでもいい。おまえが求めていることを三つ、かなえてやることに決めた。その後は、もう何ひとつかなえてやらぬことにする。」

 信者は喜んで、直ちに最初の願いごとをしました。妻が死に、もっとよい女と再婚したいと頼んだのです。彼の願いはすぐさまかなえられました。

 だが、友人と親戚が葬式のために集まり、妻の長所を回想しはじめると、信者は自分がせっかちだったことに気づきました。彼は今や、自分が妻のすべての美徳に全くうとかったことに気づいたのでした。彼女のようによい女性がほかに見つかるでしょうか?

 そこで信者は神に妻を生き返らせてくれるように頼みました! これで彼には、あとひとつしか願いごとが残らなくなりました。そこで、今度こそ過ちをしないぞと心に決めました。だって今度はもう取り返しがつかなくなるのですから。彼は多くの人に相談しました。友人のうちのある者は不死を願うようにと勧めました。しかし他の者は言いました。もし健康でないとしたら不死なんてなんの価値があるだろう? そしてもしお金がなかったら健康がなんの役に立つだろう? そしてもし友人がいなかったら、お金があってもなんにもならないではないか?

 何年もたちました。その信者はまだ何を頼んでいいか決心できませんでした。生命か、健康か、財産か、権力か、それとも愛情か。ついに彼は神に言いました。「何をお願いしたらいいか、どうかお教えください。」

 神は男が困っているのを見てお笑いになりました。そして言われました。「人生がおまえに何をもたらそうと、心が満たされていられるようにと願いなさい。」

アントニー・デ・メロ 著 / 谷口 正子 訳  「小鳥の歌」(女子パウロ会)より
  

ページ上部へ戻る