こころの散歩
上着の見張り
上着の見張り
アッタールが著した聖人列伝に、偉大なスーフィー教の賢者ハビブ・アジャミについて、つぎの話が載っている。
ある日彼は沐(もく)浴に出かけた。上着を土手にほうったまま、川に入った。バスラのハサンがたまたまそこを通り、上着に気づいた。だれかが不用心にもほったらかしにしたものかと思い、持ち主が現れるまで見張っていようと決めた。
ハビブが沐浴を終えて、上着を取りにきた。ハサンは言った。
「沐浴のあいだ、だれかに上着の監視を頼んだんですか。盗まれたかも知れんのですよ。」
ハビブは答えた。
「神にお世話をお任せしました。すると神はあなたにこの見張り役をお与えになりました。」
画: 松浦 志帆