こころの散歩

仕返しの石

仕返しの石

 トルストイは子供たちのために次の短い話を作った。
 一人の貧乏人が、ある金持ちに施しを求めた。金持ちは何も与えないで「あっちへ行け!」と吐き捨てるようにいいながら、石を拾って貧乏人に投げつけた。貧乏人はその石をポケットにしまってつぶやいた。「この石を取っておこう、いつかあの金持ちに投げ返してやる時が来るだろう」と。
 金持ちは犯罪を犯した。牢獄に引かれて行く日、貧乏人は道で又このひとに会った。貧乏人は前に進み出て、ポケットから石を取り出し、腕を上げた。しかし、ちょっと考えて石を下に落とし、こうつぶやいた。「俺はどうしてこんな長い間、この石を大事に取っておいたのだろう。何にもならないことだった。あなたが金持ちで強かった時、私はあなたを怖れていたが、今は気の毒でならない。」

「落ち葉「いい人生」と言うために」(ドン・ボスコ社)より
  

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