こころの散歩
優先順位
優先順位
時間の有効利用についての講義。
教授は、将来性のある若者たちを前にして、大きな口のガラス製4リットル容器を取り出し、机の上に置いた。そして、握りこぶし大の岩石を1ダース取り出し、注意深く容器の中に1個ずつ並べた。縁まで一杯になると、学生たちに質問した。「容器はもう一杯になっただろうか?」 全員が「はい」と答えた。それから、また質問した。「本当にそうだろうか?」
そして彼は、机の下から小石の入った袋を取り出し、つるつるした小石を数個ずつ容器の中に入れては振った。そうすると、小さな石は下の方へおりて、大きな岩石の間に入っていった。彼は、また質問した。「容器は一杯になっただろうか?」 今度は皆慎重になり、一人の学生が、「たぶん違うと思う」と言った。「その通り」と教授は答えて、今度は、砂の袋を取り出した。そして、岩石と小石の隙間を埋め尽くしてしまうまで、砂を注ぎ入れた。それから、もう一度質問した。「もう容器は一杯になっただろうか?」 「いいえ」と全員が答えた。教授は水さしを取り出して、容器の縁まで水を一杯に注ぎ入れた。
この実験を終えると、彼は問いかけた。「この例は何を表しているだろうか?」 一人の学生が言った。「一生懸命努力すれば、どんなに予定が詰まっていても何とかなるし、予定していなかった大事なことさえ付け加えることができるという教訓です。」 「いや、そうではない」と教授は答えて、説明した。「実は、いかに優先順位をつけるかだ。もし、初めに大きな岩石を入れなければ、後からは入らない。大事なことは初めに入れておかなければ、ずっとできないままになるだろう。」
(作者不詳 / 五十嵐 京子 訳)
画: 三村 阿紀