こころの散歩
別の手を使う
別の手を使う
うちでは家族の誰かにむっとするようなことを言われると、十回中九回ぐらいは、何かとんでもない、ばかげた言い方でやり返します。すると言ったほうも言われたほうも笑い出してしまい、結局はお互いそれほど目くじらをたてることでもなかったなと気づくわけです。たとえば私が仕事から疲れて帰り、がんばって手のこんだ夕食をつくる。そしてやっとキッチンがきれいに片付いたというときに、夫が愚かにも「そろそろ明日の弁当の支度にかかったほうがいいよ」などと言う。そこでわっと泣き出して、「あたしがどんなに長く台所に立っていたかわからないの!」と抗議することもできるでしょうが、私はたいてい別の手を使います。たとえば「エイコーラ、エイコーラ」と「ボルガの舟歌」を歌いながら、背中をまるめて船を漕ぐかっこうで歩きまわる。そして「旦那さん、あっしは奴隷でござんしょうか?」
この手に出ればほぼまちがいなく、相手はうれしい反応をしてくれます。①笑う!②素直にあやまる!③手伝ってくれる!うまくいけばこの三つとも。
アレン・クライン 著 / 片山 陽子 訳 「笑いの治癒力」(創元社)より