こころの散歩

命の糧

命の糧

 ある所に未亡人が一人で暮らしていました。彼女はとても孤独でした。
 ある日彼女は、大きなペットショップに行き、よく話すという高価なオウムを買いました。
 「きっと私を元気づけてくれるでしょう。」
 彼女は期待して、オウムを連れて帰りました。しかし数日たってもオウムは何も話しません。
 彼女はペットショップに文句を言いに行きました。ペットショップの主人は、「鳥かごには、はしごが必要です。はしごを上ったり降りたりしているうちに、話すようになるのです。」と言いましたので、彼女ははしごを買いましたが、オウムはまだ話しません。
 彼女はまた、ペットショップの主人に訴えました。主人は、「ブランコも必要ですよ。」と言うので、彼女はその通りにしましたが、一週間たってもオウムは言葉を発しません。
 彼女がまたペットショップに行くと、今度は「鏡も必要です。」と言われ、その通りにしましたが、効果はありませんでした。
 次の週、彼女は悲しみにくれながらペットショップに行き、そのオウムが死んでしまったと報告しました。店の主人が当惑して、「オウムは全く何も話さなかったのですか?」と尋ねると、彼女は弱々しく答えました。「いえ、最後の息を引き取る時に、こう言いました。ペットショップに鳥の餌はないのか?」
 店の主人はあまりに鳥のいろんな必要に気づかいすぎていたので、彼らは最も基本的な必要―食べ物―のことを忘れてしまったのでした。

“MORE STORIES of LIFE and LAUGHTER”Fr.Bel San Luis, SVD
  

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