こころの散歩

四つんばいになった園長先生

四つんばいになった園長先生

我が子が幼稚園に行くようになって初めての運動会。ビデオカメラ持参で出かけた。
徒競走になった。早速我が子にカメラを向けた。ヨーイドンで走り出した。その瞬間、画面から我が子が消えた。「あれ?」とファインダーから目を離した。子供はつまずいたらしい。
バタッと四つんばいになっている。「あっ」と驚いたら、そのまま走り出した。
四つんばいのままだ。周りがどっと笑う。我が子は懸命に走る。
笑いはいつの間にか手拍子に変わった。親としては顔から火が出る思いだった。
その時だった。
突然、園長先生が飛び出した。我が子と並んで四つんばいで走り始めたではないか。
さらに手拍子が高くなった。そして、ゴール。
園長先生は子供を高々と抱き上げて言った。
「やったね。偉いね。すごいわ」
ベテランの女性園長先生だった。

その晩やさしく我が子に聞いた。
「なぜ四つんばいのまま走ったの?」
「馬って走るのが速いから…」

「ひと言の奇跡」(PHP研究所)より
  

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