こころの散歩

地獄か天国か

地獄か天国か

 ある男が死んで、連れて行かれたところは壮麗な大広間だった。見たこともないほど豪華なご馳走の並んだ大テーブルがあった。ところが男がテーブルにつくと、背後に何者かがあらわれて、両腕に薄い板をしばりつけていく。おかげで男はひじを曲げられなくなり、目の前のすばらしい料理を食べようとしても、口に運ぶことができなかった。あたりを見ると、ほかの死人もみな同じ目にあっている。そして口々に不平を言い、境遇をのろっていた。
 男は席を立ち、自分を案内してきたもののところへ行って、こう言った。「ここは地獄だね。ならば教えてくれないか、天国とはどんなところだい?」
 案内者は男の腕から板をはずすと、広間のさらに奥へと連れていった。そこにはもう一つの大広間があり、大テーブルがあって、同じように豪華な料理が山盛りになっていた。ところが男が席につくと、またもや何者かが背後にあらわれ、腕に板をしばりつけていく。男はこんどもひじを曲げられず、料理を口にすることはできなかった。これでは前と同じだ、少しもよくなっていないと嘆きながら、あたりを見まわすと、ほかの死人たちもみな同じ目にあっている。ところがその広間のようすは前とはまったく違っていた。
 その広間の人びとは自分の境遇を嘆いてはいなかった。隣どうしでおたがいに料理を食べさせ合い、誰もが満足そうにしていたのだ。

 天国にいるか地獄にいるかはあなた自身が決めること。まわりの状況にしばられたままもがいているか、心の姿勢をかえて、がらりと違う景色を見るかは、あなたしだいである。

アレン・クライン 著 / 片山 陽子 訳 「笑いの治癒力」(創元社)より
画: フェリペ・オカディス
  

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