こころの散歩

売るのは種だけ

売るのは種だけ

 ある婦人が夢を見た。繁華街にある新着ブランド物を扱う店に入ると、なんとカウンターの向こうに神がいる。

 「ここで何を売っているのですか。」彼女は聞いた。
 「あなたがお望みのものなら、何でも」と神が答えた。

 耳にしたことをどうしても信じられず、彼女は人間が望みうる最高のものを求めようと決めた。
 「心の平和、愛、幸せ、知恵、恐れにとらわれない心。」彼女は言った。ついでちょっと考えてから、つけ加えた。「私のためではなく、地上の万人のために。」

 神はほほえんで答えた。
 「思い違いをしているようだね。ここではそうしたものの実りは売っておらんよ。種だけだ。」

アントニー・デ・メロ 著 / 裏辻 洋二 訳 「蛙の祈り」(女子パウロ会)より
  

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