こころの散歩

変わってはいけない

変わってはいけない

 わたしは何年間もノイローゼでした。わたしは心配し、落胆し、自分のことしか考えませんでした。皆がわたしに変わるようにと言いつづけました。皆がわたしに、わたしはノイローゼだと言いつづけました。
 そしてわたしは、皆を恨みました。彼らをもっともだと思いました。そして変わりたいと願いました。でも変わることができませんでした、どんなに変わろうと努力しても。

 わたしを何よりも傷つけたのは、親友もわたしをノイローゼだと言いつづけたことでした。彼もまた、わたしに変われと言い張るのでした。
 そしてわたしも、親友の言うことをもっともだと思いました。でもわたしは、彼を恨めしく思う気持ちを抑えられませんでした。わたしは気力を失い、何をすることもできなくなりました。

 それからある日、彼はわたしに言いました。「変わってはいけない。君のままでいなさい。君が変わろうと変わるまいと、どうでもいいことだ。わたしはありのままの君が好きだ。君が好きなんだよ。」
 これらの言葉は、わたしの耳に音楽のように響きました。「変わってはいけない、変わってはいけない、変わってはいけない…わたしは君が好きだ。」
 そしてわたしは安心しました。そしてわたしは生き返りました。
 そして、ああ、なんという不思議! わたしは変わったのでした!

アントニー・デ・メロ 著 / 谷口 正子 訳 「小鳥の歌―東洋の愛と知恵―」(女子パウロ会)より
画: 和田 耕一
  

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