こころの散歩
天の審判
天の審判
「微笑みの教皇」と呼ばれ、在位一か月で世を去ったヨハネ・パウロ一世が、まだベニスの大司教、アルビノ・ルツィアーニだった頃、「素晴らしい人々」という本を著している。その中に、次のような話がある。
あるアイルランド人が突然の死を迎え、天の審判の場に出廷した。彼は非常に不安だった。何しろ、人生の総決算はどうみても赤字だったからだ。列が長かったので、待っている間に、審判の様子を注意深く見守り、耳をそばだてていた。
膨大なファイルを調べると、キリストは初めの人にこう告げられた。
「私が飢えていた時に、あなたは食べ物をくれた。よろしい。天国に入りなさい。」
次の人に、また言われた。
「私が渇いていた時に、あなたは飲ませてくれた。」
三番目の人にはこう言われた。
「私が牢獄にいた時、あなたは訪ねてくれた。」
こうして次々と審判が進んだ。天国に入れられた人々の行いを、アイルランド人は、いちいち自分に当てはめてみた。不安はよけい募ってきた。人に食べ物を与えたこともなければ、飲み物を与えたこともない。囚人も病人も見舞ったことはなかった。
やがて彼の番になった。キリストがファイルを繰られるのを見ながら、震えて待っていた。さて、ところがキリストは目を上げて言われた。
「あまり記録はないね。それでも、私が悲しく、落ち込み、参っていた時、あなたはやって来ては、冗談を言って笑わせ、おかげで私は元気が出た。天国へ行きなさい。」
画: ホアン・カトレット