こころの散歩

小さな石で

小さな石で

 その日は曇り空でとても寒かった。凍った小さな湖の上で、仲良しの二人の男の子が、いつものようにスケートを楽しんでいた。すると突然、氷が割れて、一人の男の子が滑り落ち、氷の下に沈んでしまった。もう一人の男の子は、近くにあった石を手に取り、友だちの頭の上の氷を、力をふりしぼって割り始め、何とか友だちを助けることができた。
 到着した救急隊員は、二人が氷の上にいるのを見て驚き、助けた子供に聞いた。「どうやって氷を割ったんだ? そんな石で? そんな小さな手で? あんなに厚い氷を割るなんて、とても考えられない!」
 そこへ、一人の老人が現れて言った。「私はこの子がどうやって氷を割ったか知ってるんだが‥‥。」
 その場にいた人々は老人に尋ねた。「えっ、どうやったんですか?」
 老人は答えた。「友だちが湖に落ちた時、『そんな小さな石じゃ、氷は割れないよ』と男の子に言う人は、周りにだれもいなかった。何ごとも、助けたい一念で信じれてやれば、できるものなんだよ。」

(作者不詳)
画: 軽部 修司
  

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