こころの散歩
小言の多い妻と馬のお話
小言の多い妻と馬のお話
ある日、いつものように彼は畑を耕していると、妻が畑までお昼のお弁当を届けに来ました。彼は年老いた馬を木陰に引いてゆき、自分は切り株に腰掛けてさっそくお弁当を食べ始めました。その途端、また妻は小言を始めたのです。不平を並べ、不満をぶちまけて、次から次へと果てしなく続いていました。すると突然あの年老いた馬が後ろ足を蹴り上げたのでした。たまたま馬の蹴り上げた足は、妻の後頭部を直撃し、妻は即死してしまいました。
数日後、妻のお葬式がとり行われました。そこで教会の長老はおかしなことに気がついたのでした。女性の弔問客が彼の元にやってきて一言二言いうと、彼は大きくうなずいていました。しかし男性の弔問客が彼の元にやってきて何か言うと、彼は首を横に振っていたのです。誰がやってきても同じことが続いていましたので、長老は不思議に思い後で訳を尋ねてみることにしました。
お葬式の後で、さっそく長老は農夫のところにやってきて、女性には首を縦に振っていたけれど、男性には必ず首を横に振っていたのは、どうして?と尋ねてみました。すると老父は「女性方は私の所にやってきて、妻が安らかな顔をしていたとか、お洋服が素敵だとか言ったので、私はその通りですと答えていたわけです。」と言った。
「じゃ、男性の場合は?」と長老は尋ねました。「男達はみんな『あの馬を売ってくれるか?』と聞いたんですよ。」と農夫は答えたのでした。
“MORE STORIES of LIFE and LAUGHTER”Fr.Bel San Luis, SVD
画: 泉 類治