こころの散歩
幸せな娘、不幸せな息子
幸せな娘、不幸せな息子
二人の婦人が十数年ぶりに旧交を温めた。
「息子さんはどう?」一方がたずねた。
「彼はかわいそうよ」と他方が答えた。「不幸せな結婚をしたものだわ。嫁ときたら家事なんかこれっぽっちもしないんだから。料理も裁縫も洗濯も掃除もやらない。彼女のすることといえば寝ること、ぶらぶらすること、ベッドでの読書ぐらいなものよ。あの子ったら嫁のために朝食をベッドまで運んでやるのよ。あなた信じられる?」
「それはひどいわね。で、娘さんのほうはどうなの?」
「彼女は幸せな結婚生活を送ってるわ。彼女は天使と結婚したのよ。家事は一切させないの。料理、縫い物、洗濯、掃除、すべて召し使いにやらせているわ。毎朝、彼は朝食をベッドまで運んでくれるんですって、信じられる? 彼女のすることといえば、好きなだけ眠り、残った時間はのんびりするか、ベッドで本を読むかなの。」
アントニー・デ・メロ 著 / 裏辻 洋二 訳 「蛙の祈り」(女子パウロ会)より
画: 塩谷 真実