こころの散歩

悟り

悟り

 何年もの修行の後で、弟子が〈師〉に、〈悟り〉を与えてください、と頼みました。
 〈師〉は彼を竹やぶに連れていき、言いました。
 「この竹を見るがよい、なんと高く伸びていることか。別の竹を見るがよい、なんと背が低いことか。」

 この瞬間、弟子は悟りを開いたのでした。

 仏陀は悟りに達するために、あらゆる霊的な思考、あらゆる禁欲の形式、当時のインドで可能なかぎりのあらゆる修行を試みたと言われています。すべてがむだでした。最後に仏陀は、一日ぼだい樹の下に座りました。そして悟りを得たのでした。
 彼は、まだ教えを受けていない者、とりわけ思考を職業としている者には不可解そのものに思われる言葉で、悟りの秘密を弟子たちに伝えました。
 「僧たちよ、深く息を吸うときは、深く息を吸っていることに気づきなさい。浅く息を吸うときは、浅く息を吸っていることに気づきなさい。ほどほどに息を吸うときは、ほどほどに吸っていることに気づきなさい。気づくこと。注意すること。没入すること。それ以外にはないのです。」

 こうしたたぐいの没入は、小さな子供に見られます。子供たちは〈天国〉にたやすく近づくことができます。

アントニー・デ・メロ 著 / 谷口 正子 訳 「小鳥の歌」(女子パウロ会)より
  

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