こころの散歩

愛し合っている二人

愛し合っている二人

 ある日、シオウクス族の長老のテントに、若い男女が手をつないでやって来た。戦士の中で最も勇敢で尊敬されている”闘牛”と、部族の中で最も美しい娘”青い雲”であった。二人は、「私たちは愛し合っています。とても愛しているので、離れるのが怖いのです。ずっと死ぬまで一緒にいられる約束のおまじないか、お守りが欲しいのです。どうすればいいか教えてください。お願いします」と繰り返し願った。
 長老は、「とても困難な方法だがあることはある」と答えた。それは、二人が別々の高い山に登り、頂上で 選りすぐりの鳥を生け捕りにすることであった。長老は、”青い雲”には北の山で最も美しく強い鷹を、”闘牛”には雷の山で最もどう猛な鷲を、捕まえてくるよう命じた。二人は互いの無事を祈って抱き合い、それぞれ出発した。
 三日後、言われた通りに鳥を捕まえてきた二人の若者は、長老のところに来て、矢継ぎ早に尋ねた。
 「この鳥をどうすればいいですか? 殺して血を飲むのですか?」
 「肉を切り裂いて食べるのですか?」
 すると、長老は答えた。
 「違う。私がこれから言うことをしなさい。まず、二羽の片足を革ひもでつなぎなさい。それから空へ放しなさい。」
 二人の若者は言われた通りにして、足を皮ひもでつながれた二羽の鳥を放した。すると、鷹と鷲は飛ぶどころか、床を転げ回るばかりだった。数分後、二羽は飛べない無力さにいらいらし、傷つくほどにお互いをくちばしで突つき始めた。
 長老は言った。「これこそおまえたちが望んでいたものだ。今見たことを忘れるな。おまえたちは鷹と鷲のような存在だ。お互いをつないでしまえば、たとえ愛し合っているからそうしたとしても、引きずり合いながら生きることになってしまう。それだけでなく、遅かれ早かれ、お互いを傷つけ始めるであろう。もし二人の愛が永続することを願うなら、一緒に飛びなさい、決してお互いをつながずに。」

  
画: 泉 類治
  

ページ上部へ戻る