こころの散歩

憎しみの環

憎しみの環

 ある会社の偉い人が、とてもいらいらして取締役を怒鳴りつけた。
 取締役は帰宅すると、食べきれないほどの量の食事を見て、お金を使い過ぎだと怒鳴って、妻を責めた。
 取締役の妻は、皿を割った女の使用人を怒鳴りつけた。
 使用人は、彼女をつまずかせた犬を蹴飛ばした。
 犬は外に走り出し、同じ小道を歩いていた女性が邪魔だったので噛みついた。
 この女性は、ワクチンを打ってもらい、傷の手当てをしてもらうために病院へ行った。そして、ワクチンが痛かったと若い医師を怒鳴りつけた。
 若い医師は帰宅すると、食事が彼の好みのものでなかったと母親を怒鳴りつけた。
 寛大で、愛と慈悲に溢れる母親は、息子の頭をなでながら言った。
 「明日はあなたの好きな食事を作ることを約束しましょう。あなたはたくさん働いて、疲れているから、一晩ゆっくり休む必要があるわ。あなたが安らかに眠れるように、あなたのベッドシーツをきれいで香りの良いものに換えてあげるわね。」
 息子の幸福を祈り、一人にしてあげようと部屋を去った。
 この瞬間、憎しみの環が途切れた。。

  
画: 泉 類治
  

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