こころの散歩

求道者の胸をノックするもの

求道者の胸をノックするもの

 求道者の胸を強くノックするものがあった。
 求道者はぎょっとして言った。
 「どなたですか。」
 「私は真理です」との答えがあった。
 「バカにしないでください。真理は沈黙のうちに語るのです」と求道者は答えた。
 するとぴたりとノックがやんだ。求道者はほっとため息をついた。
 おそるおそる生きている彼の胸の鼓動がノックの音になっていることに彼は気づいていなかった。

 真理は人を自由にする。だが人は真理に耳を貸そうとはしない。

 われわれが真理ならざる何かを口にするとき、いつもそこで主張しているのは、「私は真理を好まない」ということだ。

アントニー・デ・メロ 著 / 裏辻 洋二 訳 「蛙の祈り」(女子パウロ会)より
  

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