こころの散歩
漁師の満足
漁師の満足
お金持ちの観光客がサングラスをかけ、高級カメラを手にして常夏のビーチを歩いていると、漁師がカヌーのそばでうたた寝をしているところに出くわした。
「どうして漁に出ないのかね?」と観光客は尋ねた。
「今日の分はもう獲ったんですよ」と村人は答えた。
「しかしどうして、また出かけて行ってもっと獲って、お金を作って網を買おうとはせんのかね。そうすればもっと魚が獲れるようになるのに。」
「なんのためにですかね?」
「そうすればカヌー用のモーターを買って、もっと遠くのもっと条件の良い漁のポイントまでも出かけていけるようになるじゃないかね。」
「でもなんでもっと魚を獲るのかね?」
「それはもっとお金を稼いで、漁をする船団を手に入れることもできるようになるためだよ。」
「それで?」
「そうすればあんたはお金持ちになって、時間をのんびりと楽に過ごせるようになるからだよ。」
「なんだ、それはもうやっていることだよ。」
“Edward de Mello”より
画: 白石 龍司