こころの散歩

牛乳桶の二匹の蛙

牛乳桶の二匹の蛙

 二匹の蛙が誤って牛乳桶に落ちました。必死で牛乳の中を泳ぎ回り、桶の縁からはい上がろうとしましたが、その努カもむなしいのでした。逃げるすべはありません。閉じ込められたのです。
 一匹は、希望もないのに、助けを待つのは無駄だと考え、戦うのをやめました。そして桶の底に沈んでおぼれてしまいました。
 もう一匹は、あきらめませんでした。なんとか逃げるてだてがあるはずと信じ、それを見つけようと決心しました。そこで、力をふりしぼって牛乳を足でかき、懸命に泳ぎ回りました。
 そのうち、ふと気がつくといつのまにかバターの塊のてっぺんに座っているではありませんか。
 蛙はどれほど驚き、安堵の胸をなで下ろしたことでしょう。一生懸命かき回したせいで、牛乳がバターになったのです。そこで、蛙は少し休んで元気を取り戻し、ぴょんと桶から飛び出しました。

ホアン・カトレット 著 / 中島 俊枝 訳 「たとえ話で祈る―聖イグナチオ30日の霊操―」(新世社)より
画: ホアン・カトレット
  

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