こころの散歩

王様と鳴かないニワトリ

王様と鳴かないニワトリ

 昔、一人の老人が木の箱を持って、王様のもとを訪れました。「この箱の中には不思議な力を持ったニワトリが入っています。普段は鳴かないのですが、身分に相応しくない職に就いている人物がこの扉を開けると、鳴いて知らせるのです。」
 そこで、宮廷中の大臣や家来が順に呼び出され、一人ずつ王様の前で扉を開けていきました。何百という家来が順に扉を開けるのですが、ニワトリは驚いたような顔をするだけで、決して鳴きません。「このニワトリは、もともと鳴かないニワトリに違いない!」と王様は怒りましたが、老人は、「とんでもない、王様、あなたはとても良い家臣をお持ちなのです。」といってなだめました。
 ところが、その日の夜も終わろうとする頃、ニワトリのけたたましい鳴き声が宮廷中に響き渡りました。家来達が駆けつけると、ニワトリの箱の横に王様が立っていました。「今まで、誰が開けても鳴かなかったニワトリが、どうして鳴いたのでございますか?」大臣が尋ねても、王様は黙ったままでした。が、その時、窓から朝日が差し込むのを見た王様は、ほっとしたように言いました。「夜が(余が)明けた(開けた)からじゃ」

東方出版「現代一休とんち話」より
  

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