こころの散歩
白い子ウサギ
白い子ウサギ
昔々、月に一人のおじいさんが住んでいました。おじいさんは、月からいつも地上を眺めていましたが、ある日、地上にとても仲の良い三匹の動物がいるのに気がつきました。サルとキツネと白い子ウサギです。月のおじいさんはたいそう心を魅かれたので、地上に降り立ち、三匹が遊んでいる森にやって来ました。そしていきなり、こう頼みました。
「私も友達の仲間に入れてくれないか。」
「いいですよ。」
と三匹は答え、さっそく新しく友達になった月のおじいさんのために、友情のしるしのプレゼントを捜して、てんでにかけ出しました。
サルはバナナがたわわに実った木に登り、大きな房をとって来て、月のおじいさんに差し出しました。
「これはぼくからのプレゼント。」
キツネは渓流のふちでじっと待ち伏せ、見事なマスがやって来ると、やっとばかりに捕まえて月のおじいさんのところに持ってきました。
「ぼくのプレゼントはこれ。」
ところで、白い子ウサギはたきぎにする乾いた小枝を捜して、森の中を一生懸命歩きまわりました。そして一抱えのたきぎを集めると、月のおじいさんに渡して、こう言いました。
「ほら、これがぼくからのプレゼント。この小枝で火を起こして、ぼくをその上にのせて、黄金色になったら、食べるんだよ。」
月のおじいさんは驚いて言いました。
「ほんとうにありがとう。三匹とも私の親友だよ。なかでも嬉しいのは白い子ウサギのプレゼントだったよ。なにしろ自分自身をくれたのだから。さあ、私と一緒に月に行こう。」
こうして、おじいさんはウサギを月に連れて行きました。だから、いまでも、夜、月が出ると、そこに白い子ウサギの姿が見えるのです……。
画: ホアン・カトレット