こころの散歩

盲目のラビ

盲目のラビ

 年老いたラビがついに盲目となった。何も読めず、訪れてくる人の顔を見ることもできなくなった。

 いやしの業を行う者が言った。
 「私にお任せください。治してさしあげよう。」

 ラビは答えた。
 「その必要はありません。見たいものは何でも見えますから。」

 目を閉じている人がだれでも見えないわけではない。
 目を開けている人がだれでも見ているわけではない。

アントニー・デ・メロ 著 / 裏辻 洋二 訳 「蛙の祈り」(女子パウロ会)より
画: ルオー
  

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