こころの散歩
知識ではなく創造力!
知識ではなく創造力!
昔々、ある国に一人の善良な男がいました。ある時、その男は、町の有力者によって不当な罪を負わされて、裁判にひき出されました。悪い権力者が一人の女性を殺して、自分の罰の身代りとして冤罪を着せようと企んだのです。それは、その善良な男にとって逃げることのできない恐ろしい絞首刑に行く裁判の罠でした。裁判官は聴衆の前でそのかわいそうな男に言いました。
「あなたは信心深い人ですから、判決の運命を神におまかせしてください。神があなたのことを決定してくれるのです。今ここに、“有罪”“無罪”を書いた2枚の紙があります。」
そう言って裁判官は、2枚とも“有罪”と書いて用意してあった、2つ折りのくじを差し出しました。
「さあ、選び取ってください!」
男は大きく深呼吸してじっと目を閉じて長い間沈黙しました。
そして長い沈黙に耐えきれなくなった人々に突然、不思議なほほえみを見せながら…、さっと一枚のくじを選び取ってすぐに飲み込んでしまいました。
「何ということをするのですか! これでは選んだ判決を確認できないではありませんか!」と裁判官が怒りました。
善良な男は言いました。
「いいえ、確かめるのは簡単ですよ。残った方の紙面を見れば私の選んだものが判ります。」
裁判官は歯ぎしりをして怒りながらも、その通りにして容疑者を解放するより他にありませんでした。
画: 軽部 修司