こころの散歩
砂と石
砂と石
アラブ人の二人の友人がいた。
ある日、口論になり、一方の青年が相手を殴った。殴られた方は、怒りと悔しさでいっぱいになり、砂の上にこう書いた。「あいつは僕を侮辱して殴った。一番分かり合える友だちだと思っていたのに、何てひどいやつだ!」
それから時を経たある日、殴られた方の青年は、海で遊泳中に溺れかけた。あの同じ友人は、最初に気がついて、必死で彼を助けた。そして、二人は無事に岸までたどり着いた。助かった青年は、石にこう刻んだ。「僕が溺れかけたとき、君は助けに来てくれた。僕の命を救ってくれた、一番の友だちだ!」
青年が石に刻みつけているのを見て、友人は不思議そうにきいた。「なぜこの前は砂に書いて、今度は石に書くのかい?」
青年は答えた。「友だちが侮辱したことは、そのうち消えて忘れるように、砂に書いた。そして、してくれたいいことは、いつまでも忘れないように、石に彫っておこうと思ったんだよ。」
(作者不詳)
画: フェリペ・オカディス