こころの散歩
砂浜の老婦人
砂浜の老婦人
五人家族が浜辺で一日を楽しく過ごしていた。子供たちは水につかったり、砂でお城をつくったりした。小柄な老婦人がやってきた。白髪を風になびかせ、着ているものは汚れ、あちこちが破れていた。彼女はぶつぶつ言いながら、浜から何かを拾いあげては袋に入れていた。
両親は子供を傍らに呼びよせ、老女に近づかないようにと言いふくめた。ときおり身をかがめては何かを拾い、家族にほほえみかけた。だれもあいさつを返さなかった。
この小柄な老婦人は長年にわたって浜辺に落ちているガラスの破片を拾い集め、子供たちがケガなどしないようにと心がけていたのだった。一家は後日、そのことを知った。
アントニー・デ・メロ 著 / 裏辻 洋二 訳 「蛙の祈り」(女子パウロ会)より