こころの散歩
神へのあこがれ
神へのあこがれ
1人の村人が、聖者のもとに来た。聖者は木の下で瞑想していた。男は言った。
「神を見たいのです。どうしたら神を体験できるか教えてください。」
聖者はいかにも聖者らしい威厳を保って、瞑想を続けた。
村人は家に帰り、翌日またやってきて、同じように求めた。そして次の日も、次の日も、次の日も求めたが答えをもらえなかった。彼の堅忍不抜ぶりを見て、聖者はついに口を開いた。
「あなたはまことに、心から神を求めておいでのようだ。午後、川で沐浴(もくよく)する。そこに来なさい。」
2人が川に入ると、聖者は男の頭をがっちりつかむや、水中に押しこんだ。数分の間、そのままにした。哀れな 男は水から出ようと、あがき続けた。やっと聖者は男を放した。そして男に言った。
「明日、バニヤンの木のところに来なさい。」
翌日、男が来ると聖者は真っ先に言った。
「水のなかにおまえを押しこんだとき、なんであんなに大騒ぎしたのだ。」
男は答えた。
「空気を吸おうとしてですよ。空気がなければ窒息してしまいます。」
すると聖者はほほえんで言った。
「空気を絶望的なまでに求めたように神を求める日が来たとき、おまえはたしかに神を見いだすだろう。」
アントニー・デ・メロ 著 / 裏辻 洋二 訳 「何を、どう祈ればいいか」(女子パウロ会)より
画: 軽部 修司