こころの散歩

神への愛のための鎖

神への愛のための鎖

 ある時、聖イグナチオ・デ・ロヨラはその同士カリストと共に、人びとに語っていた内容への疑惑のため、サラマンカで監獄につながれてしまった。獄舎に訪ねてきた多くの人びとの中に、現ブルゴスの枢機卿であるフランシスコ・デ・メンドーサがいた。メンドーサ卿が「監獄の中の具合はどうか、監禁されているのがつらくはないか」と親しげに尋ねると、イグナチオは答えて言った。「今日ある婦人が捕らえられた私を見て、同情の言葉を述べましたが、その際、私が彼女に言ったとおり、あなたにもお答えしましょう。〈そうおっしゃるのはあなたが神への愛のために捕らわれの身となりたくないということを示しています。あなたにとっては監獄がそれほどひどい所ですか?私にとって、神への愛のためかけてもらいたいと思うこれほどの鎖や手錠は、サラマンカ中でもそんなにありません〉と。」

A・エバンヘリスタ / 佐々木 孝 訳 『目で見る聖イグナチオ・デ・ロヨラの自叙伝』(新世社)
画: ホアン・カトレット

  

ページ上部へ戻る