こころの散歩
穴あき籠
穴あき籠
あるときのこと、一人の男が罪を犯し、長老たちが協議に集い、師父モーセにも声をかけた。
ところが彼は出て来たがらず、そこで祭司が伝言を送り伝えた、「来てください。皆があなたをお待ちしてます」。
そこでとうとう腰をあげ、使い古しの穴あき籠に砂をいっぱい詰め込んで、背中に負ってやって来た。
出迎えた人々が、「師父、いったいそれは何ですか」と尋ねると、老師は答えてこういった、「自分の罪は背後に垂れ流し、それが目に入らぬのを幸いに、誰かの罪を裁くため、今日はこうして出向いた始末」。
これを聞いて一同は、何も問わずにこの兄弟を赦して解放したという。
画: 野村 祐之