こころの散歩
羽根袋
羽根袋
むかしむかし、あるところに、仲のいい二人の男がいました。
一人が成功した時、もう一人はそれをねたんで、周りの人に彼のことをとても悪く言いました。しばらくたって、この男は、自分がしたことで友だちが不幸になったのを見て、何とかしようと思い、一人の老人のところにアドバイスを求めに行きました。
「友人にしてしまったことをなかったことにしたいのです。どうしたらいいでしょう?」
老人は答えて言いました。「袋を取って、軽い小さな羽根でいっぱいにしてごらん。そして、それを外でばらまいてごらんなさい。」
男は、「それは簡単だ」、と喜びました。そして、羽根を袋に入れて、その後、全部をばらまきました。
男は、老人のところに戻って、こう言いました。「言われたとおりにしましたよ。」
老人は、「それは簡単だったはずだよ。では、これから出かけていって、君がばらまいた羽根を、全部もとの袋に戻しなさい。」
男はとても悲しくなりました。なぜなら、羽根を集め直すのは無理だとわかっていたからです。
男の様子を見て、老人は言いました。
「君が風に飛ばした羽根をもとに戻せないのと同じように、友だちにした不幸をなかったことにはできないのだよ。もう、前のとおりにはいかないのだから、後悔しているなら、友だちにあやまるしかないのだよ。」
(作者不詳)
画: 松村 美智子