こころの散歩

自分のことよりも

自分のことよりも

 ある夜、車が嵐のために全く動けなくなってしまいました。その車には若い夫婦と小さな子どもが乗っていました。
 何時間もたってから、助けに来た人は深く心を動かされました。
 父親はオーバーも着ないで、妻と子どもを抱え込んで死んでいました。
 母親は、自分のオーバーと夫のオーバーを着て、子どもを抱きこんで生きていましたが、両腕は凍傷になってしまい、子どもを助けるために切らなければなりませんでした。
 子どもは元気で、小さなベッドの中にいるかのように暖かく守られていました。
 二人とも自分のことよりも小さな子供のことを考えていました。

画: 白石 龍司
  

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