こころの散歩

自然のことわり

自然のことわり

 禅の高僧一休は子どもの頃からたいそう賢かった。あるとき彼は修行していた寺の和尚の高価な骨董品の茶碗をあやまって割ってしまった。彼はたいへんなことになったと悩んだが、やがて老師の足音が聞こえてくると、その割れた茶碗を背中に隠し、部屋へ入ってきた老師にこうたずねた。
 「和尚さま、なぜ人は死ぬのでしょう?」
 「それはじゃ」と老師は説明した。
 「それが自然のことわりだからじゃ。あらゆるものはいつかは死なねばならん。それまでの命じゃ。」
 そこで一休はこなごなに割れた茶碗を老師の前へ出し、こう言った。
 「このお茶碗も、ちょうど死ぬときだったんですね。」

  
画: 軽部 修司
  

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