こころの散歩

芝生の中のヒキガエル

芝生の中のヒキガエル

 父親が十二歳の娘に言いました。

 「庭の芝生を刈り取ってくれたら、お小遣いをあげるが、どうかね。」

 少女は作業に取りかかり、心をこめて働きました。夕方までに庭の芝生はきれいに刈り込まれました。ただ庭の一角のひとところだけが刈り残してありました。
 父親は言いました。

 「刈り残したところがあるから約束の金はあげられない。」

 「買いたいものがあるんだけどな」

と娘は言いましたが、芝生はそのままにして刈ろうとはしませんでした。

 どうしたんだろうとけげんに思った父親は、刈り残しの芝生をのぞいてみました。真ん中に大きなヒキガエルがいました。ヒキガエルの上に芝刈機をかけるのが忍びがたく避けて通ったのでした。

 愛のあるところに秩序の乱れが伴います。
 完ぺきな秩序を推し進めれば世界は墓地と化します。

アントニー・デ・メロ 著 / 裏辻 洋二 訳 「蛙の祈り」(女子パウロ会)より
画: 塩谷 真実
  

ページ上部へ戻る