こころの散歩

花と太陽

花と太陽

 花は花であることが気にいりませんでした。この境遇は受け入れかねました。何もかもいやです。冬の氷と雪、立ちのぼる春の熱気、じりじり照りつける夏の太陽、秋の憂うつ。そんないらだちをある日、太陽にぶつけました。

花 「私は誰なの。」

太陽 「君は花だよ。」

花 「花、どうせ花よ。私は花って好きじゃないわ。果物ならよかったのに。」

太陽 「君は果物志向かもしれないが、花って素晴らしいじゃないか。春が来るのを知らせる役目をしているのだからね。」

花 「何かむなしくて、寂しいのよ。心細くて。」

太陽 「怖がることはないよ。私が一緒にいるじゃないか。」

花 「冬になると、太陽なんか捜しても見当たらないわ。」

太陽 「一体いつになったら君は、愛においては、不在も存在のひとつだとわかるのだろう。」

花 「あなたはいつも、さっぱりわからない謎をかけて私を煙にまくのよ。ただ花でありなさいとか、捜している太陽は君の中にあるとか…。」

 しかしついに、花の不満が終わりを告げる日がやって来ました。照らしはまったく不意に訪れました。花は悟りました。木の高さはその根の深さと同じであり、春は沈黙と雪の冬があって初めて訪れる、という大自然の摂理を理解しました。そして、花であるとは、心のうちに眠っている芳香と美しい花を咲かせる力とを、そっと目覚めさせてくれる太陽に守られ、暖められることなのだと、よくわかりました。
 それからは太陽に、憤まんやるかたないといった質問はしませんでした。花自身の生活が答えをだしてくれたのですから。

  
画: ホアン・カトレット
  

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