こころの散歩
近寄って傷口に…
近寄って傷口に…
「(ひとりの律法の専門家が)イエズスに、「わたくしの隣人とはだれですか」といった。
イエズスはこれに答えて、次のように仰せになった。
「ある人がエルサレムからエリコに下っていく途中、強盗に襲われた。彼らはその人の着物をはぎ取り、打ちのめし、半殺しにしたまま行ってしまった。‥‥‥‥
ところが、旅をしていたあるサマリア人が、その人のそばまで来て、その人を見て哀れに思い、近寄って、傷口に油とぶどう酒を注ぎ、包帯をしてやった。それから、自分のろばに乗せて宿屋に連れていき、介抱した。」(ルカによる福音書10:29b,30,33,34)
これは「善きサマリア人のたとえ」として、よく知られている話であります。このたとえのポイントは何でしょうか。それは”近づいていく”ということです。
われわれ凡人は、何か面倒なことにぶつかると、なるべくそれを避けたいという気持ちにかられます。なんとか口実をもうけて、逃げようとする傾向があるのです。逃げ出した後で、自分は悪いことをしたわけではない。何もしなかっただけだ、と自分に対していいわけを考えます。聖書は教えます、何もしないことこそ悪なのだ、と。自ら進んで、だれかの隣人になりなさい、と。愛とは、近づいていこうとする心の姿勢のうちにあるというのです。
前島 誠 著 『ワンポイント聖書』(女子パウロ会)より
画: V.v.ゴッホ